大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ウ)689号 判決

相手方等が東京地方裁判所に別紙目録第一、第二の建物について所有権にもとずく明渡請求権の執行保全のため仮処分を申請し、申立人主張のような仮処分命令があつた事実は当事者間に争がないところである。よつて申立人主張のようにこれを取消すべき特別の事情があるか否かにつき審査するに、本件建物が中央区銀座の電車通りに面する枢要な場所に位置することは当裁判所に明らかであつて、証人菅野保、矢吹勇雄、松田信四郎、松崎保の各証言を綜合すれば、申立人は本件建物において菓子類販売および喫茶営業をなしているのであるが、昭和二十四年仮処分を受けて以来建物の改装改造等をしない結果相当みすぼらしい状態であり、殊にその近隣に有力な同種営業店数軒をひかえており、かつ銀座は日本の中心店舗街として顧客の嗜好に適するよう常に店舗の改造、改装等を怠らないようにするのでなければ、顧客を吸収すること困難であつて申立人の本件建物における営業もこのままの状態では没落を免れ難い運命にあることを認めうべく、更に右仮処分の本案である第一審訴訟については昭和二十八年二月東京地方裁判所において申立人勝訴の判決があつたが、控訴の結果当裁判所に繋属し判決言渡あるも上告を予想せられ、その解決が近きにないこと明らかである以上、本件仮処分をそのままにしておくにおいては、申立人の蒙るべき損害は通常受くるもののそれに比し著しく多大であるといわねばならぬ。この点につき相手方等は現在においても執行吏の許可を得て本件家屋の改造等をなすことを得るかのように主張するが、本件仮処分は明らかに現状変更禁止を命じているのであるから、到底申立人を前記損害より救うがごとき改造、改装等をなすことを許されているものではなく、相手方等の主張は採用し難い、したがつて本件仮処分にはこれを取消すべき特別事情があるから申立人をして主文掲記の保証を供せしめ、本件仮処分命令を取消すのを適当と認め、民事訴訟法第八十九条、第百九十六条に則り、主文のように判決した。

(渡辺葆 牧野 野本)

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